夜のたまねぎ


 昨日につづき、ひどくむし暑い。暗がりでぼそぼそしつつ、熱をかき分け、いくらもがこうとも浮上できない。たばこに火をつけ煙を吸いこむ。そうして、じっと息をひそめる間にも、じわじわと身体に打ち込まれる綿の楔のような、緩慢な打撃のような湿った熱気。昼の陽射しに焼け爛れ剥がれかけた空気を、無垢な中心に向かって、タマネギのような夜を一枚ずつ剥きつづけた。

 よる。二週間ぶりにおでん相談室を聴く。ボ先生やら謎のjkやら某師匠やら引きも切らず凸が数珠繋ぎ、いつになく華やかでにぎにぎしい雰囲気が楽しかった。いきなり下痢の話のjkがよい音をしていたなあ。なんだろうなあ、あの音は。素焼きのオカリナとか、土を焼いただけの素朴な風琴みたいな音をしていた。それに対して、やれ球根だのトミ子だの肥料だのカタコトの日本語だので、これでもかとたたみ掛ける浜田さんがやたらと絶好調だった。古墳デートで拾った錆だらけの青銅の刀をぶんぶん振り回したら、切れ味はアレだけど緑青の毒で実は致命傷という感じだった。。 兵馬俑プロポーズの件で「同じ方を向いて行こうってことですね」という身投げ屋さんの切れ味も、数百年埋まってたけどなぜか錆びない妖刀のようだった。

 明くる朝。
 高校の卒業式の朝、何を着ていくか迷い、着たり脱いだりしている(実際は、制服がちゃんとある)。部屋の明るい窓際にタンスがあり、開けると防虫剤が転がる、ほとんど何も入っていない。卒業後に上京してからたまに帰省していた頃のタンスの感じ。ベージュかカーキ色をしたコール天やら、ペインターパンツのような何か作業着のようなすぼん。白いTシャツ、ボーダーシャツ、なんかのカットソー、ジャケットやら、白地に黒で全部違うパターンのものを、めちゃくちゃな勢いで重ね着して出かけて行くが、道の途中で場面が部屋に戻り、また脱いだり着たりして迷っている。これを5、6回くり返した後、学校に着くと式が終わっていて、ものすごく虚しい気分で誰もいない廊下や教室を歩き回る。なにも音がなくて窓際のカーテンだけが風に吹かれて揺れている。夜になり、あまり親しくないもないような顔の見えない卒業生たちとカラオケに行くところで眼が覚めた。夢だった。

 夜。
 雨トークで熟女好き芸人というのをやっていて、それを眺めておもしろかった。アタスも熟女好きな方かなあとぼんやりと自覚してたのだけど、「天海祐希が良いとか言ってる奴はロリコン」という言葉で、ああなんかすんませんでした、、という気分になった。いろいろ勉強になったような気がした。どっかの議員とか学者とか韓国女優とかの名前を出す奴が(良い意味で)やばかった。
 年下の芸人たちにちやほやされて嬉しそうなかたせ梨乃。自分とは全く関係ないそんな光景が、なにか「良いもの」のように感じられるのはなんでだろうな、不思議だなと思った。着ているベストを脱いでかたせ梨乃のケツに敷いたり、芸人たちが退場するかたせ梨乃にぞろぞろ着いて行くのも、面白いのと別に、自分にはなにか好ましい光景に思えた。原因不明。
 なにか似たようなこと、例えば「お花に水をあげるようなこと」だとか、あれこれ想像してみるけど、なにかしっくりくるような感じのが思いつかない。
 昔から、ウド鈴木さんはいろいろ喋っても7、8割は息の音で、苦しそうな音を出して、それで自分で笑ってるだけなので観てるこっちも息苦しくなってくるというか、ぐったりしてくる。やはり、あんまり観たくないなあと思った。