路地


 雨上がりの夕暮れの森を歩くと深い霧だった。外灯の場所がぼんやりとした緑色の光の柱になって奥まで続いている。真っ暗になってもしばらく歩き回り森をぬける。つめたい湿気をずっと吸ったせいか、なんだかさめざめとしたような、だぶだぶしたような気分がした。とんかつを食べて帰宅。商店で買い物をしたあと寄り道をして例の通り魔事件のあった道を歩いてみた。犯人が捕まったというニュース映像で観たのだけれど、その現場は家から50mも離れていない、好きでよく通る路地だったので存外おどろいた。30年前だかにその路地を抜けた小さな踏切で飛び出した子供が亡くなったという話を耳にしてからというもの、そこを通る時は頭のどこかでその事故の幻影を描いていたけれど、今度は通り魔事件なのである。改めて歩いてみても鬱蒼とした木立と赤いレンガ塀が風情のある静かで陰気な路地だった。事件後なにか印象の変化はないかと留意してみたけれど、あまり変わらない気がした。きっと最初からこの路地はそういう雰囲気だった。(12/23)






 途中に出てくるところ。