多部未華子のちらし寿司

 普段は大勢の人でにぎわう感じだが、その時は落ちつきしんと静まりかえった空気。視界はやや黄緑がかって彩度が低く陰が濃く画素は細かい。大きな屋敷のコの字型の長い回廊はぜんぶガラス張りで、そこにかけられたカーテンの隙間から中庭の青々とした芝生がのぞく。絨毯が深く足音はしない。回廊の行き止まりにある部屋で、屋敷の主と家政婦の多部未華子と私で食事している。漆塗りの平たい箱に入ったちらし寿司のようなもの。多部未華子は邸宅の裏手にある隣家から家事を手伝いに来ている。隣家もむかしは同じくらい大きな屋敷だったが、没落してこの家に土地を取られたのだという。屋敷を出て背の高い塀沿いを歩き、同じ区画を回りこむと砂利の駐車場がある。そこは実家の事務所の裏にあった日影の駐車場に似ている。仕事は車の中ですることになっているが、駐車場の壁にスクリーンがあって(ドライブインシアターっぽい)、そこでサッカーの試合が観たいため、昼休みの間に車が良い角度になるよう何度も駐車しなおす。適当な角度で駐車したあと、車外のスクリーンに映るサッカーをぼんやり眺めつつ、多部未華子のことを考えながら昼休みを超過してもなお微睡む。良い天気で暖かく、あたりは静まりかえっている。長閑なのだけどせつないような気もする。しばらくして多部未華子がお菓子か食べ物を運んできたあと、社長が幹部をともなって様子を見に来る。そのとき、書類かパソコンのモニタ上に仕事の内容か、水色とクリーム色をした古いテレビゲームの起動画面のようなものを見た気がする。