野外某巨大掲示板風の村おこし


 田舎の長閑な風景。10〜20mほどの崖に沿って、海辺の砂浜に降りていく獣道のようなスロープがある。崖側は植物が生い茂っていて暗く、海側は開けていて明るい。道の海側の縁に何本かの木の杭が打ってあって、よく見てみると誰かが彫った文字が読める。「jojoの荒木先生の絵を見ていると日本画の幽霊がうんちゃらかんちゃら(判読出来ない)」。道を登っていき次の杭には「急に面白い流れになって来たな」。よく見ると書き込んだ(彫り込んだ)番号と日付が小さくあって、某巨大掲示板のようなやりとりのように思える。
 スロープを登りきると公民館のような古ぼけた建物があって、すすけて黒ずんだ木の壁にハガキ大の幽霊の顔の絵が沢山貼ってある。めちゃくちゃではなく、左から右方向へ上下互い違いに規則的に飾ってある。画材は全て黒いインクか墨のようで、チャコールのモノトーンが焼杉の絵のように黒ずんだ木の壁に完璧に調和している。画風は真面目だったりふざけていたり、いろんな人が描いたようにも見えるし、一人の人が何人分も描きわけているようにも見える。モナリザの顔を目の高さで上下鏡像にしたような絵も混じっているが、そうして一緒に飾ってあると幽霊の絵に見える。口元が微笑しているのを確認する。

 家(実家)に帰る。庭のど真ん中に手作りの鉄棒のようなのがしつらえてあって、そこにぶらさがってみると気分がいい。健康に良さそうだなと思う。家にはひとけがなく、インスタント食品が入っている棚をあさったり、見慣れたタンスを開けてみると、全然知らない衣料やバッグが入っていて、それらをしげしげと眺める。

 夜。懐中電灯を持って杭の書き込みの続きを見にいく。「荒木先生がうんちゃらかんちゃら」と彫ってあったはずの杭には「不安も悲しみも浜の砂に埋もれてしまった」と彫ってある。次の杭は「急に面白い流れになって来たな」、公民館の壁の絵も変わらない。懐中電灯を向けて確認していく。
 本当は「すっかり幽霊屋敷になってて○○○」と書き込むつもりで来たのだけれど、公民館の壁の次にどこに書けばいいのか分からないし、そもそも巨大掲示板っぽいというのも単なる思い込みで、スロープの杭の言葉も、壁の幽霊画も単なる個人のいたずらと考えるのが妥当じゃないかと考え直し、急に醒めて気持ちが萎える。