へんな店

 地元のバス停の前にごく小さな商店街のようなのがあって、だいぶ前からシャッター街になっている。
 ある昼下がり、そこをぶらぶら散歩する。いつもはガランとしてひとけがないのだけど、その日はまばらに人が往来している。半ズボンを履いたどこか懐かしい雰囲気の子供たちなど。
 めずらしく開いている店がある。覗いてみると古本屋のようだが、雑誌の切り抜き(どこかの風景写真)に値段をつけたのが壁にピンでとめてあったり、本棚にあるのも一般家庭で読み終わったアレコレをそのまま突っ込んであるように見える。なにか雑然としてうらぶれた雰囲気。なんなんだろうな?と思いつつ、外から覗くだけにして通り過ぎる。店の外(となり)に大きな本棚があり、難しそうな専門書がいっぱい並んでいる。ああ、こっちがメインの商品で、あっちのは遊びみたいなもんなのかな、、と納得した気になる。
 かつて本屋だった店舗跡にも店が出来ている、ゆがみガラスの戸を開け恐る恐る入ってみる。中は古めかしい日本家屋のようで、タタキを上がると畳の座敷で中ほどに囲炉裏、そこで鉄瓶みたいなのがシュウシュウいっている。右手には二階へ上がる階段箪笥がある。勝手に上がり込むがひとけはない。座敷の奥、畳の上にじかに古写真を積んだ山がいくつかある。山の前に20円とか40円という値札が置いてある。凸面鏡に映したように顔が膨張した昔の人の古写真(ブロマイド?絵葉書?)があって、これはひょうきんだなあと思う。
 いつのまにか背後に着物を着たおばさんが座っていて、挨拶をしてから世間話。「ずいぶん遠くから古写真をお求めに来られるお客様もおられます」などと云う。おばさんは二階と一階を行ったり来たりしている。私は何か買わないと店から出づらいような気になるが、お金がないから困ったなと思う。気になった古写真をいくつか選んでも計200円にも満たない。これなら買えるな、と思うと同時に、200円ばかし買ったところでどうなるのだろう、なんだか逆に失礼ではないのか、などと心配になってくる。選んだ写真を手にしたまま、階段箪笥を登ったり降りたりするおばさんを眺めるうち、なぜか欲情する。窓の外はいつの間にか暗くなっている。

 長い夢の終わりの方。