こういう感じの方がアイツは喜ぶから

 私が通う高校の学園祭でブルース・ウィリスを招くことになった。「ブルースを呼ぶ委員会」の実行委員長は小川さんだった。当日。机や椅子が片付けられ伽藍とした教室の窓や壁には暗幕がかけられ、蛍光灯が冷たく陰気に光っている。きれいに掃除されピカピカに磨かれた床に「こういうコナれた感じにしといたほうが、アイツは喜ぶから」と、小川さんが丁寧に紙くずをまいてゆく。紙くずは色々な紙をハサミで不規則に刻んだ小川さんのお手製で、その(同じ高校生ながら、決して背伸びしない等身大の)もてなしの心みたいなやつに感心する。諸々の準備が出来たところにブルースと通訳の小柄のおばさんが現れ、前の方の壇上に上がる。ブルースは黒地に銀のピンストライプのヤクザっぽいスーツを着ている。観衆は自分を含め10人程度しかいない。2分ほどの短いスピーチを通訳が訳す。「今日はナントカカントカでナンチャラだけれど、みんなそれぞれの学園祭をエンジョイしてくれ」。端のほうで小川さんがその光景を満足そうな顔で眺めている。そのあと、ブルースは教室の後ろの方に歩いて行く。そこには質素なスクリーンがしつらえてあり、その前に立つと突然部屋の照明が落とされ「あっ」と思うやいなや、スクリーンに黄色っぽい銀河のような星雲のような模様が渦巻き、巨大なブルースの顔のアップが回転しながら奥の方に吸い込まれてゆく。なにかこの日のための特別な映画が始まるんだな、と私は思った。

 隣町の高校に自転車で向かっている途中、大きくて分厚い本を拾う。本は汚い灰色のビニールのような素材で出来ていて、ダブダブして不格好なしろもの。頁をめくるとやはりダブダブしていて、中はなにも印刷されていない。綴じてある真ん中からさらに頁を展開できることに気づく(見開き2頁が4頁に開く)。そこには黒いインクでiydさんの日記が印刷されているが、素材がビニールのせいかかすれたりにじんでいて、ただ黒っぽく汚れているように見える。写真もカラーで印刷されているが、これもかすれている。それ以上インクのかすれが悪化しないよう、手を触れないようにして気をつけて読む。

 とても長い夢をみた。印象的だったシーンを備忘。