フクロメン


 すごく空腹なような、そうでもないような、ワケの分からない気分だった(おそらく、やたら眠かった)ので、即席ラーメンを茹でる。それを鍋から直接食っていると。急激に眠気がやってきて、そのまま気持ちが悪くなった。
 そういえば、知り合いが袋入りの即席麺のことをフクロメンと呼ぶ。「カップに入ってるのがカップメンで、袋に入ってるのはフクロメン。」などと、急に雰囲気だけは厳密なようなことを、断定的に主張される。それまで「フクロメン」などという言葉をワタスは聞いたことがなかったし、なんだか響きに不穏なものを感じて未だに馴染めない。古代エジプトの王様の名前みたいだなと思う。フクロメンIII世とかいそうな気がする。それからレミオロメンというのも思い出す。ついでにメンフクロウのことも思い出す。
 ワタスはずっと猫舌という自覚があったが、それでも永年にわたり舌を甘やかし続けた結果、近年ますます猫舌具合が進行しているような気がする。ワタスではまったく歯が立たないような熱々のモノを、まわりの人が平気で食ったりしているのをみるにつけ、愕然とした気分になる。そこで「フランス人も猫舌だとか聞くし、灼熱地獄のラーメンなど無闇に喜ぶ野郎は野蛮な未開人なんじゃねえか」と開き直り、しょうがないからヤケクソでつけ麺ばかり食うことにした。
 ともかく、猫舌が鉄の鍋から直接ラーメンを食うにはそれなりの覚悟がいる。
 そして人様をつかまえて未開人と非難するまえに、ワタスはちゃんと器でラーメンを食えとも思うけどめんどくせえ。