三人のソ先生

 午后遅く、なぜかソ先生と杉並の方を自転車でうろついている。そのうち日が落ちる。青梅街道沿いのファミレスだか喫茶店に入る。案内された茶色いボックス席には、すでに酔いつぶれたソ先生がいて、向かいに座ったもう一人のソ先生がソ先生を介抱している。つまりソ先生が三人いる。
 店を出てしばらく行くと、自分の自転車の前輪がパンクしていると(ソ先生からいつのまにか入れ代わった)父親から指摘される。寺の長い塀ぞい、わずかな街灯にうすぼんやりと浮かび上がる道、自転車を押していく。前にも夢に出てきた陰気な道。鍵状の曲がり角の黒い木立。庭が墓石と卒塔婆で埋め尽くされた真っ黒い家へ続く脇道、二階へ上がる外階段。その家の人間か、誰かとすれ違ったような、あいまいな気配。
 阿佐ヶ谷の近くだったので、前にもパンク修理をしたことのある自転車屋を目指す。一階が古いショッピングセンターになっている雑居ビル。中は真っ暗で、どの店もシャッターがおりている。角を曲がった先の奥、弱々しい青い灯を背景に影絵のように自転車の車輪のスポークが見えた気がして、店がまだ開いていたと喜ぶが、もう店じまいだと言われる。
 もう一軒の店に行く。そっちは開いていて、狭い店内で先客が一生懸命、空気入れを押している。自分のパンクはおそらくチューブ交換が必要になると思い、持ち合わせがないので慌てて父に借りる。手のひらに「5+1+1=7」とペンで書かれ、なぜか7万円借金したことになるが、自分は納得している。
 そんな夢をみた。スジは単純だけど、なにか雰囲気が強烈で、細かなディティールまで印象に残っていた。

 昼に民生食堂。帰りに寺で缶コーヒーを飲む。去年と同じ曇り空、砂利道、水盤、紫陽花。