だっせん

 島みたいなところで地面を掘ったりアレしたりしながらうろちょろするゲームに夢中になる。無料プレーだと制限があるせいで、こじらす前にどうにか引き返す。
 昼過ぎ。近所まで買い出し。近所のなんかの集会所っぽい建物が改装工事中で、剥がれた外装の微粒子みたいなやつが、停めてるワタスのチャリに降りつもっている。けっこう毛だらけネコ灰だらけワタスのチャリは粉だらけ。

 もう7,8年ここに住んでいるが、未だにいかなる集会をしている建物なのか知らない。朝になると子連れ主婦が集まってきて「朝会を行いますのでなんたらかんたら」などという館内アナウンスみたいなのが響き渡る。それから子供の叫び声、歓声、童謡の合唱、泣き叫ぶ声、走り回る音などがぐちゃぐちゃに聴こえてくる。結構な悪環境だが気にならない。(これも近所の)電車の音の方が全然うるさいからだ。
 電車の音も踏切の音にもそのうちに慣れたが、まれに、薄暗い早朝から窓が震えるくらいの音圧の警笛を鳴らしつつ通過していく電車があって、それが無性に腹立たしかった。それに起こされるたび朦朧とした意識のまま「脱線しやがれクソ野郎」などと人非人的な呪いの言葉を頭によぎらせつつ、また意識が遠のき二度寝するのだった。脱線すればほぼ間違いなく電車はウチに突っ込み、道連れ必至なのだけれど、なんだかそんなのどうでもいいくらい朝っぱらからとにかく不愉快な警笛だった。「脱線して、俺もろとも爆発しやがれ」だの、会社では「隕石が落ちて全部爆発しやがれ」だの、とにかくいろいろアレだったあの頃。
 ずっと電車は脱線しなかった。あの大地震の時でさえ、ちょうど近所を走っていた電車はびくともせずに、疾風のように走り抜けていった。そこから10mもない地点で同じ時、ワタスは大きく延ばした両腕の中で暴れるレコード塔と格闘していた。からっぽの心で。

 話が文字通り脱線したが、、
 その工事現場から落ちてくる微粒子か、花粉なのか、はたまた目下ブレーク中の原発のアレのせいか、眼がチカチカして、それからグルグルして、ひっちゃかめっちゃかになりつつも、基本的にはなんだかだいぶいい陽気。きらきらと輝く放射能の日だまりの中を、寂しげな方角へふらふら走っていった。心配していたタバコはまだ大丈夫だったが相変わらず紙がない。ほかの商品棚もがらんとしている。

 帰投。昨日のお好み焼きをチンして食う。
 テレビで被災地の様子を観る。子供を失い、避難所暮らしの年配の女性。ボランティアのマッサージを受け、そのあとインタヴュアーに放心したような表情で「もう、どうでもいいんです」。ボランティアの体操の先生が指導し、平均寿命超と思われる老婆たちが「もしもし亀よ」を歌いながら、笑顔で踊っている。