軽業ひるぼらけ衛星

 よる。なんとかストリームというjk氏の過去の動画配信を観ていた。なんとかストリームというのは右のパソコン(過去日記参照)では動かないし、左のパソコン(過去日記参照、してもしなくてもいいです)でもぎりぎり動くという感じなので、つながるまで数分間放置をも厭わないような、もうそれ以上のんびりしたら息することすら忘れて死ぬぞという勢いでのんびりした気分のときに拝見させていただいている。ジャケ制作にいい画像を拾おうと思って眺めていると、とつぜんjk氏が裸で登場したので出合いがしらをガツンとやられる。いいポーズかつ動画圧縮のあのモザイクの霧が晴れる瞬間、キャプチャーのタイミングをじっと狙う。キャプチャーの時にシャッターの音がするので、カメラマンになったようなつもりで、半裸のjk氏をパシャパシャやっていると、どうやら一部始終を見守っていたらしい大根泥棒氏に大笑いされた。しょうがない、まあ、大笑いされるようなことしている自覚が私には猛烈にある。反省するふりをしてみる。

 もうひとつ動画につなぐと、今度はjk氏が真剣な表情でとつぜんお手玉を開始した。これが、かのジャグリングというやつだろうか? 高級なお手玉みたいなやつ。状況がよく分らないのは音声を消していたからだ。さっきまで視聴していた動画でovo先生と夫婦喧嘩、じゃなくて議論が始まり、私はjk氏とovo先生のうちわもめのファンであるし、「夫婦喧嘩は犬も喰わない」などという箴言など一向気にしない犬以下の馬の骨野郎であるところの私は、そちらの音声を聴きながら、高級なお手玉の様子を聴取することにした。
 紅いタンクトップいっちょうで、赤白青黄色の玉をあやつる姿が見目鮮やかだった。そして耳にはovo先生の切り裂くようなするどい言葉が不断に飛び交う。しつこいようだが音を消していたので、なぜjk氏がまっ昼間から部屋でお手玉をするのか、その状況の背景は分らない。じつはとても深い理由があったのかもしれない。ただ、あまりにも突拍子もなく薮から棒ならぬ玉が飛び出したこの状況を大切にしたいような、なにか、不思議を不思議なままにそっとしておきたいような、いろいろ静かに受け入れてみたい気持ちになっていた。明るい陽射しにまどろむ室内を三色の玉がつぎつぎ宙を舞う映像はとても長閑で、同時に白昼夢のようなどこか幽玄な趣きさえあった。 そしてまた、ヘッドフォンからはovo先生からjk氏へ不断に向かうするどい言葉たち。自我とはなにか、自分、他者、世界、境界とはなにか、シュレディンガーの猫および量子力学で愛を解くことへの批判、エベレット解釈への批判、なぜわざわざ運び込んだシンセサイザーをまじめにやらないのか、あなたは酒を飲むために配信するのではないか、疲れたならさっさと寝ろ...etc
 いつしか言葉たちも、三色の玉といっしょに、いたってくそマジメな表情で曲芸にうち興じるjk氏を中心に、周回する衛星のようにくるくる飛び回った。