ハタビ




ハタビの月曜。久しぶりに近所まで散歩に出かけた。
あてもなく場末をうろつく。
有名なヨ○バシカメラの名の由来ともなっている、新宿の淀橋地区。
新宿の繁華街に程近い低地であり、水と死の気配が漂う絶好のなごみスポットである。
かつての淀橋浄水場やら、暗渠化された無数の水路の痕跡やら、
江戸期まで遡れば、もの悲しい「姿見ずの橋」伝説やら、、
おだやかな初秋の陽射しに満たされた路地の端々に、
いまだに、しっとりとした湿度のにおいを嗅ぎとれる。

思えば、まっとうな勤め人だった時分、
週末になると、西〜北新宿の再開発地域をあてどもなくさまよい、
近代的なビルと、昭和の残照のような寂れた古民家がせめぎあう地区のただなかで
深いため息をついたり、タバコを吸ったり、無為にぼんやりしていた頃から
今に続く、この無気力と倦怠と斜陽の日々が始まっていたのだ。

シャッターに指をそえて少時息をこらすも、
路地にただよう沈滞した空気の中、ハタビのハタは、
最後まで風に揺れることはなかった。