殺人現場の練習曲

 駅の地下道で多部未華子をきつくしたような女性がすれ違いざまに大袈裟に髪をばさっとかきあげるので、匂いに意識を集中するとボールペンのインクのような薫りがした。なぜか平賀さんというかつての同級生のことを思いだした。
 商店で炭酸水、アイスコーヒー、飴やら買う。雑居ビルの非常階段をのぼり、アイスコーヒーと煙草を飲みながら隣の空き地の工事の様子を眺める。大勢の鳶職の人たちが鉄筋にまたがり鉄筋と鉄筋を接合する金具をボルトのようなもので留めている。それぞれが近くに段ボール箱を置いている。そこにボルトが入っているらしい。槌のようなものでボルトを打つ音が白っぽい曇り空に響いて、また小雨がふってきた。

 澁澤龍彦矢川澄子に何度も堕胎させたという話(知らなかった)に興味をもち、そこだけググってあれこれ読んだりした。
 映画キリングフィールドのエチュードという曲が気分にハマって何度も再生するなど。ひかりごけ事件の再現動画みたいなやつに使われていて、それが随分合っているような感じがして印象的だった。キリングフィールドは大分むかしに午後ローだか深夜のTV映画だか気の抜けたような時間に見て、丘を越えて水たまりに嵌ったら周りが全部○○という強烈なシーンのせいでずっと記憶に残っていたけど、こんな曲が使われてたとか、どんなシーンで流れてたとか、まったく覚えていなかった。