スタンボー華


 よる。大根氏の民生食堂へ。「紙カツ」というのの話を聞いていて、食べてみたかったので、それを頼む。実際に食べてみると、想像していたよりも平凡というか中途半端というか、なんつうかぼんやりとした印象だった。これなら、開き直って貧乏臭さ一直線のハムカツの方が好きかも知れない。ハムの間にチーズを挟んで揚げたやつとか、なんだかうすら悲しいような、変に心に沁みるような味がして、たまに無性に食べたくなる。
 それからまた例によって要塞のような公園で缶コーヒーを飲んだ。鬱蒼とした森からいい匂いのする冷たい風がふいてきたり、動く人は誰もいない静まりかえった広場に幾千の虫の声が静かな波のようにふりそそぎ、なんともいい気分だった。
 薄汚れたワタスやワタスの生活とは無関係に、嗚呼、世界は美しいんだなあ、、などとすっかり仰山な気分に浸って帰宅してみると、ニュースにて「都内某所で4.7なんちゃらシーベルト放射能線量のホットスポット発見」などとやっていて、頭をぶん殴られた気がした。

 いろんなことが起きたが忘れる、一番最後に自称作詞家という男が現れ「小型犬〜中型犬。便秘のコロコロした糞を拾い集めて窓際に。よく乾いたやつを両手のひらでそっと包み、そろばん玉状に。それをプールサイドの洒落たカクテルグラスの周りに並べてみれば、ぜんぶ台無しだ。」みたいなことを言ってくる。即興で作った歌詞で、「結局こういうのが良いんだ」などと説教される。初めはよく分からないけど、だんだんとなんとなく納得する、、という夢だった。

 ひる。なんの前触れもなく、記憶の底から「おつむてんてんクリニック」という言葉が急に現れて、すごい勢いで通りすぎていった。なんだか、大量のゴミが水面にただよう薄汚れた漁港の波打ち際を、ただ眺めているような気分である。いちおう手を延ばしこっちに引き寄せて海から拾い上げたところで、どうせゴミなんだからしょうがねえよなあ、、と、ググってみる気にもならず。
 スタンボー華という名前を見かけて、なんかすげえなと思った。「スタンボー」が苗字で「華」が名なのだろうか、わからないけれど、不意打ちにドーンと目の前に飛び込んでくるような勢いを感じた。菊の花を手のひらに掴めるだけ掴み、叩き付けるように剣山に突き刺し「生け花一丁上がり!」というようなヤケクソなイマジネーションが広がった。